6月28日(日)
全日本自転車競技選手権大会ロード・レース 男子エリート(ME)
240km (16.0km×15Laps)
今年も、年に一度日本一の選手を決める全日本自転車競技選手権大会が行われました。2015年の舞台は、全日本初開催地となる栃木県那須町。全日本選手権はとしては珍しく大きな上りはなく、細かいアップダウンが連続するテクニカルなコースでした。
愛三工業レーシングチームの作戦は、これまでのレースの実績から中島康晴をエースとして、綾部勇成、伊藤雅和、早川朋宏で周りを固める布陣。そのメンバーを逃げが得意な小森亮平、平塚吉光、中根英登で支える。また他のカテゴリーが集団でのゴールスプリントになる展開が多かったこともあり、福田真平がゴールを狙うことも視野に入れていました。
また事前の情報として、集団内にいるのと前を引いているのではキツさが全く違うこと、現在日本にはピュアスプリンターが多く存在しないこと、愛三が最多エントリーの8人で出場していることなども狙っていくメンバー構成の考慮に入れました。
レースが始まって、最初に大きな動きがあったときにはすでに各チームのエース級が動いてきていて、各チームがこの逃げを逃すのが早すぎるのではないかという懸念があった。例えば、ヨーロッパのレースの展開だと、ステージレースのように、強いチームがあまり強力ではない逃げを逃し、各チームでアシストを出し合って逃げを吸収して追いつき、そこからエース級の選手たちの戦いが行われる展開が多い。しかし今回は各チームの人数が少ないので、大きな逃げを逃してしまうと後々牽引ができないチームが多い印象。このまま後半までチームでの牽引が始まらないのであれば、このままレースが終わる可能性が非常に高い。愛三からは、この逃げに調子の上がっている小森と平塚がオーダー通りに入っていたのですが、他チームのエース達と優勝を争うとなると、正直分が悪い。ここでエースかサブエースが入っていたら、このまま逃していたと思うが、全日本は距離も長く、最終的には人数よりも個の力。渋々2人を後ろに下げて、集団を振り出しに戻してもらう為に集団を引いてもらう。
自分も最初は、先頭集団はあまり逃げる気がないのではないかと考えていたが、なかなか詰まらない差を考えると逃げ切りも視野に入れていた様子。そうするとこのコースの特性から、引いている方が集団にいるよりも力を使う。集団が逃げに追いつくに連れて、集団内にいる選手の方が有利になってくるはず。アシストの仕事により展開をひっくり返していく。綾部、小森、平塚、調子の悪かった中根を中心にローテーションをする。
集団に追いついたあとは、ゴールスプリントにしないために自分たちでも攻撃的な展開にしていくのみだが、攻撃的に展開をしていく選手たちが逃げで力を使っていたとなれば、その後誰が破壊力のあるアタックをするのだろうか。いくら優勝候補だからといって、優勝を狙っているからには捕まった後ではゴールが近づいた勝負処まで休みたいのが心情。案の定、その後にあまり強力な先行グループは現れず、また女子レースとの交差のためのニュートラルもあり集団のリズムが狂っていく。その後も有力選手たちの激しい潰し合いが始まり、プロトンは徐々に焦りを見せ始め、この辺りからゴールスプリントを得意とする選手たち、そしてレース中に集団の中で身を潜めて走っていた選手たちへのチャンスが増えていったように思う。
ゴールまでのアタックでは逃げて勝ちたい選手がまとまって逃げることができない。ラスト1周のTeam UKYOの土井選手のアタックでスプリントにしたくない選手たちが引き摺り出され、11名の逃げが決まる。優勝した窪木選手はそこに単独で追いつき、さらにそこからアタックをかける。誰もつけないことか明らかに残っている力が違った。ゴールスプリント狙いで集団に待機していた選手は出遅れ、逃げの選手たちは手が出なくなる。愛三も例外ではなく、11名の逃げには早川が、そしてその後ろの集団には中島が控えていたが、そこから優勝を狙うには先頭が遠すぎた。
結果、窪木選手、同じくTem UKYOの畑中選手、そして宇都宮ブリッツェンの増田選手が抜け出して表彰台。後続のスプリントは8名を吸収して中島が後続の5番手でゴールして7秒差の8位。また終始アシストに徹した早川がトップから9秒差の15位のフィニッシュとなった。最終的に20名強の選手が先頭集団でのフィニッシュになりました。
前半での出遅れを強力なアシスト陣でレースを振り出しに戻し、悪くない状態で後半に向かうことができたが、他チームとの思惑もなかなかうまく噛み合わず、最後は苦しい展開になってしまった。最後は単純に力の差と絶対的な自信の差が出てしまったようにも思う。レースでは、レース中のちょっとした躊躇や勘違い、思い違いでもその後の結果を大きく左右します。全日本選手権は以前からも、大人数よりも少数精鋭の方が迷いがなく良い結果でている傾向があります。今回も自分たちでレースを組み立てながら結果を出すことができませんでしたが、世界選手権におけるイタリアやフランスも毎回結果を出しているわけではありません。そのくらい難しいことを成し遂げられるチームを作っていけたらと思います。
まだシーズンは終わったわけではないので、後半戦に向けて準備していきたいと思います。
応援ありがとうございました。
Text : Takumi BEPPU
Photo : Sonoko TANAKA @ Peloton Images Asia
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