ツール・ド・いくちじま(National Event)
11月10日と11月11日に広島県尾道市生口島で行われたツール・ド・いくちじま レモンランドレースに出場しました。この大会は全日本学生ロードレース・カップ・シリーズの1戦として位置づけられ、インカレ・ロードレース、学生選手権ロードレースと並び大学生のロードレースにおける頂点を決する大会のひとつです。今回は特別に主催者招待チームとして日本のUCIコンチネンタルチームを代表して出場させていただきました。今大会はステージレースではなく、土曜日のクリテリウムと日曜日のロードレースはそれぞれワンデーレースとして行われました。
土曜日のクリテリウムは街の中心にある平山郁夫美術館の前を走る1.4kmのサーキットを26周する37kmのレース。ルールはポイントレースで、2周回に1回あるポイント周回の通過順で争われ、最も多くポイントを稼いだ選手が優勝というもの。前日に行われたチームミーティングでは、ホームストレートが追い風のため最終コーナーを後ろから追い上げるのはなかなか難しいことからチームで固めて通過すればポイントが取りやすくなるということ、また大学生選手の実力があまりわからなかったので、2周に1回のポイントに拘らず、最悪の場合は4周ごとにポイントをとれるようにする作戦で望みました。
レースがスタートして1回目のポイントを福田 真平が余裕を持って通過。その後もチームメイトに守られた福田はポイントを加算していく。その他のポイントは各選手がバラバラに獲得していたため、福田とポイント2位の選手の差はどんどんと開いていく。途中立命館大学の選手や広島県選抜の選手がアタックを仕掛けるも、綾部、中島、伊藤、木守が反応して鉄壁の守りを見せる。そうしているうちに集団は約半分になっていた。ラスト4周で広島県選抜の野中選手がアタックすると伊藤 雅和が反応して、そのまま伊藤は野中選手をアタックで突き放す。その後ろでは綾部が最後のゴールスプリントに向けて1人でコントロールし、中島、伊藤、木守、福田の順番でゴールスプリントへ。最後は後ろから上がってきた現全日本学生ロードレースカップシリーズ・リーダージャージ着用の明治大学・京都大学混成チームの西沢選手が差し込んでくるも福田がそのまま逃げ切り優勝、木守が最後に西沢選手をかわして2位でゴールした。福田のスプリントも冴えていましたが、木守の粘りのあるスプリントは予想していなかっただけにとても印象的でした。
クリテリウムのゴールスプリント
優勝 福田 真平 2位 木守 望 3位 西沢倭義選手(明治大学・京都大学混成チーム)
実際レース前に自分が思っていたよりも大学生との力の差があったのですが、選手たちはそんなに楽ではなかったと話していました。愛三工業レーシングチームとしては、大学生選手たちと同じレースを走ることで、愛三工業レーシングチームがプロチームとして堂々とレースをまとめることができること、そしてその中で高いパフォーマンスで競えることというのはお互いにとってよい刺激になり、貴重な機会であると考えます。この愛三の走りを見て次回愛三がどれくらいの力でどういうレースをしていたかなどを模してレースをするようになれば、エリートにあがったときにそんなに大きなギャップを感じなくなると思います。実際に成績を出した福田、木守もまだ大学生とそんなに年も変わらない年代です。そういう選手が活躍することによって、チームに憧れを持ったり、選手としての目標設定にしてもらえるようになることも今後の活動にとってすごく大切になってきます。
日曜日は15kmのコースを10周回する150kmのロードレースでした。当日はあいにくの雨で気温も低く、タフなコンディションでのレースになりました。前日のクリテリウムで集団の人数が減るのが早かったので、前半はチームとしてはあまり動かず集団をまとめるような動きをして、できるだけ人数を残して完走者を増やすこと。そしてラスト5周くらいからレースを始めるようにしました。とうのも他チームにあまりチーム力がないことや、人数の割にコースが厳しいので、あまり早くからレースを始めてしまうと、バラバラの耐久レースになってしまうことが懸念されたため。
レースはスタートして落ち着いたペースで進みました。途中4名ほどの逃げ集団が形成されました。逃げができたときは3分くらいの差を保つ予定にしていたので、その通りにチームで3分差のままコントロール。残り5周から綾部 勇成が先頭固定で逃げとの差をつめていき残り3周の上り区間で先頭を吸収。そこで満を持して中島 康晴がアタック。その後単独で走行している中島を広島選抜の野中選手が鋭いアタックで追走。そのアタックについていけたのは東京大学の安井選手だけで、後に伊藤 雅和は「あまりにも切れがありすぎてついていけなかった。」と話しました。チームとしてはそこに1名入れていたらもう少し有利な展開ができていたのですが、それくらい野中選手のアタックは強力なものでした。
野中選手と安井選手は先頭の中島に追いつき先頭は3名に。しかしながら中島は下りが得意なので、下りで差をつけて平坦で後続に脚を使わせることができ、2選手から常にアドバンテージをとる。後続はこの時点で6名に減っており、愛三・広島県選抜が先頭を引かなくなったので差が一気に3分弱に広がりました。そして3名はそのまま最終周回に入り、中島が上りで後続を突き放し先頭を独走する。その登坂を安井選手が2番通過、野中選手はハンガーノックで遅れをとりました。後続は登坂区間で伊藤が単独で飛び出し、野中選手を吸収。そのまま3位の位置で独走を開始しました。1位、2位、3位はそのまま各自独走のままゴール。その後木守 望が6位でレースを終えました。
優勝の中島 康晴
3位の伊藤 雅和
優勝 中島 康晴 2位 安井 雅彦(東京大学 3位 伊藤 雅和
終わってみると完走者8名をとても厳しいレースになりました。しかしながら前半に逃げる勇敢な選手、最後の展開で諦めずに追走する選手、集団から遅れてもしっかりと最後まで完走しようとする選手の走りを見て、これからはこういう機会が多くあればよいと感じました.これから学生選手とプロ選手が競争を共にすることで、今まではあまり実感のできなかったプロのレベルを実際に体感することができ、学生選手たちの意識の変化や競技力の向上につながっていくものと思います。上位に入った愛三の選手たちも2〜3年前までは同じU-23の選手であり、今回参加していた選手たちとそう変わらない環境で走っていました。その中でチームプレーやレース展開の組み立てなど、プロとして見せることができた2日間でした。今回の経験を是非自分たちのレースでもトライして、今後につなげてもらいたいと思います。
またツール・ド・いくちじま関係者の方々には、この栄えある第1回大会に招待していただき大変ありがたく思っています。今後この大会がツール・ド・瀬戸内になりUCIアジアツアーに組み込まれた暁には、是非参加させていただき、再び優勝を狙っていきたいと思います。素晴らしい瀬戸内の自然の中でのレースを行うことができ、選手・スタッフ一同大変光栄に思います。
次回のレースは11月25日に沖縄県・名護市北部やんばる地区で行われるツール・ド・おきなわ(UCI 1.2)です。長い2012シーズン最後のレースになります。目標は2年連続の優勝、そしてUCIポイントの獲得です。
最後まで応援よろしくお願いします。
Text, Photo: Takumi Beppu
ツール・ド・いくちじま
結果
クリテリウム(1.4km×26LAP=37km)
1位 福田 真平(愛三工業レーシングチーム)60P
2位 木守 望(愛三工業レーシングチーム)24P
3位 西沢 倭義(明治大学・京都大学混成チーム)17P
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4位 伊藤 雅和(愛三工業レーシングチーム)13P
18位 中島 康晴(愛三工業レーシングチーム)0P
24位 綾部 勇成(愛三工業レーシングチーム)0P
出走53名/完走25名
ロードレース(15km×10LAP=150km)
1位 中島 康晴(愛三工業レーシングチーム)Time 4h30m34s
2位 安井 雅彦(東京大学)4h31m72s
3位 伊藤 雅和(愛三工業レーシングチーム)4h32m67s
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6位 木守 望(愛三工業レーシングチーム)4h33m72s
DNF 綾部 勇成、福田 真平
出走52名/完走8名
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