あけましておめでとうございます。愛三工業レーシング新監督の別府匠です。
今年もよろしくお願いします。
さて今回はサポクラのみなさんへのコラムの第1回目ということで、いつもと違う感じで書いていきたいと思います。自分のことはブログなどでも書けるので、ここではみなさんも興味があるであろう、レース期間中の自転車選手の1日について触れていきたいと思います。これはみなさんから見えない部分でもあるので、想像しているものとは違う世界かも知れません。イメージを崩さない程度で書いていきますね。これはこれからぼくが監督をする上での覚え書き的なものにもなるんですけどね。笑
自転車選手の朝は早かったり遅かったりです。早いものだとツールドおきなわの7時。(今は6時55分)ヨーロッパで早かったのは、走ったことのある中ではスイスの「ジロ・デル・ラゴ・マジョーレ」というマジョーレ湖を1周するレースの8時でした。逆にスペインなんかは遅いみたいですね。去年フミが走ったポーランドのレースもやたらと遅かったみたいです。でもだいたいは9時から11時にはスタートします。この時間帯だとゴールする時間がだいたい昼過ぎなので、現地やTVなどでファンの方々に見てもらいやすいといった事情もあるみたいです。
選手はスタート約3時間前に朝食を済ませます。その3時間は食事、準備、移動でだいたいすぐ過ぎてしまいます。移動前の選手の行動は様々。入念なストレッチをしたり、ただTVを見たり、読書をしたり、音楽を聴いたり。ほとんど毎日移動なので、すぐに片付けられるように物はあまりバッグから出しません。
そしてスタート1時間前に会場に着くように移動します。会場についたらまずスタートサイン。そして補食を受け取ります。
これもチームによって違うと思いますが、フランスのアマチュアチームにいたときは監督から補食の入った小袋を渡されていました。中にはチョコやキウイやチーズが入っていました。愛三だとパワーバーとパワージェル、グリコのBCAAなどを選手がその日の状況に合わせて選んで持って行きます。補食は基本として20kmにつき1つ持って行くので、200kmだとパワージェル約10個になります。チームカーから受け取ったり補給地点でもらえるのでそんなに一度に持って行く必要はありませんが。ボトルも選手によってはCCDだけとか真水が欲しい選手もいるので、中身はそれぞれ違います。
そしてアップ、レースの作戦の確認などを済ませ、スタートラインへ。ロードレースの場合スタートはそんなに重要ではないので、結構みんなだらだら並びます。アジアだと日差しが暑いので、みんな日陰に蝉みたいに固まっています。雨の日も然り。でもスタートの写真はけっこう新聞や雑誌に使われるので前に並ぶこともアピールになることがあります。ステージレースだとスタート5分前に各賞のリーダージャージが前に並びます。またスタートラインでは故人を偲び黙祷をすることもあります。イランでは選手の安全を願って、羊が生け贄として捧げられていたことがありました。中国だと大きなステージに市長さんが立ち、市民がたくさん集まって豪勢なイベントをやっていたこともありました。国によって、様々なセレモニーが行われます。
そしてスタート。正式スタート0kmまでのニュートラルのときはみんなリラックスしています。選手同士、チーム関係なく、おしゃべりをしたり、前日のレースの展開や結果を話したり。ただスタートからアタックをかける選手は違います。常に集団の後方または横で様子をうかがい、スタートと同時にアタック。リラックスしている選手からは罵声があがります。みんなスタートから飛ばしたくないんですよね。そうやってレースは始まります。
レース中の細かい描写はいつもやっているのでもうゴールします。
ゴールした後は、選手はチームカーに戻ってくるか、スタッフが用意した場所に集まります。優勝・入賞していたらポディオムに行ったり(レースによっては1位のみか3位まで)、ドーピングコントロールに行ったり。その他の選手は帰る準備ができるまで飲み物を飲んだり、サプリメントを飲んだり。このときの人気の飲み物は炭酸飲料。ヨーロッパでも炭酸水が人気でした。500mlがあっという間になくなります。でもあまり汗をかかない日のレースだと普通に水とかCCDとかを飲んでますね。むしろ炭酸が飲みたくない。それと回復系でクエン酸&BCAAを飲んだりしています。
そうして落ち着いたら次のホテルに移動。アジアのレースだと自走で行ける距離の時もあれば、ありえないくらい遠い時もあります。遠い時はだいたいバスでの移動になります。ここで防寒着をもってないとエアコンでかなり冷やされます。逆にエアコンが全然効かないバスもあるので、その時は窓全開で走っています。大会が用意したバスも数台しかないときもあり、表彰対象の選手をセレモニーの最後まで待ったり、座席が足りなくて選手全員座れないなんてこともあります。そうなるとスタッフには「場所取り」という新たなミッションが与えられることになります。
そして数々の困難を越え(?)ようやくその日の宿泊場所へ。宿舎もレースによって雲泥の差。日本を含め、韓国や台湾や香港のレースのホテルは超豪華。普段でもあまり行かない高級なところなので逆にこっちが恐縮してしまいます。東南アジアではまちまちで、高級なところもあればやばいところもあります。ある意味くじ引き感覚です。それが楽しくもありますが・・・。
宿に帰って来たら順番にシャワーを浴びます。場所によってはそのまま手洗い洗濯。日本はコインランドリーがたくさんあって便利です。そして順番にマッサージに入ります。マッサージを待っている間の選手はホットドリンクを飲んだり、雑誌を読んだり、メールをしたり、TVを見たり、なんか食べたり、寝たり・・・と基本的に朝と同じですね。でもリラックスしているから幾分感覚が違います。選手によってはホテルの周りを散策する選手もいます。でも外に散歩に行く選手は少ないように思います。
夕方6時くらいから食事。基本的にはブッフェスタイルです。でも明らかに選手に向きでないものが多いです。でも食べないと生きていけないので食べます。そうしていると意外に慣れてくるらしく、そのうちいろんなものが食べられるようになります。とは言え、お腹やられて走れなくなるので常に注意は必要です。自転車選手は内臓も強くないとやっていけません。特にアジアでは。
そして食事が終わったらチームで全体ミーティング。次の日のスケジュールやレースの反省、次の日のレースに向けて話し合います。これもチームによってはだいぶ色があると思います。何度かいろんなチームのミーティングに参加したことのある人に言わせると、愛三のミーティングは「楽しそう」らしいです。なんでですかね?
そして就寝まで各々自由時間です。TVを見る選手はほとんどいなくて、部屋にインターネットがない場合(ホテルによっては部屋有料、ロビー無料など)は無線LANの電波をキャッチしにフロントロビーへ行きます。(こういう場合、たくさんの選手達がフロントでインターネットを使っているので競争率が高いです)。他には雑誌を読む選手、電話・メールをする選手、ドラマや映画を見る選手、ゲームをする選手などなど。基本的には話をしていることが多いです。ルームメイトはよき話し相手であり、よき理解者です。
そして就寝。意外とみんな早くは寝てません。次の日の起きる時間から逆算して8時間くらいを見ているので、10時スタートなら3時間前の7時に朝食なので、11時~11時半くらいに寝ます。愛三だと2人部屋でどちらかが「寝ますか」と発言したら電気が消えて就寝です。レースで疲れているので寝付きはいいですが、ときに騒音障害もあったりして、次の日の朝の話題になることも。
そんな感じで1日が終わります。書いてみたのですが、全部出ていていないような。感覚がまだオフモードみたいです。なので、今年また確かめてきますね! 選手はレースのために常に気にかけてることがあり大変です。そういうところも含めて温かく見守って応援していただけたら幸いです。
2011年は新規加入の選手が3名が加わり9人体制で臨みます。監督としては選手個々の力を十二分に引き出せたらと思っています。これからもみなさんを熱くさせるレースをモットーに頑張って行きます。どうぞ応援よろしくお願いします。
愛三工業レーシングチーム監督
別府 匠